こんにちは、司法書士法人ホワイトリーガルのブログを執筆している司法書士の久我山左近です。
相続登記義務化の施行も始まり、相続された不動産の名義を適正化するための法整備が加速されています。
今回の記事で詳しく解説する相続土地国庫帰属制度もその流れの一つの制度になります。
相続で土地を引き継いだ相続人にとって、それが有益な土地であれば問題ありませんが、もし不要な土地を相続した場合はその処分に困ることになります。
そこで相続で不要な土地を引き継いだ相続人の救済に繋がる可能性があるのが、今回の記事でご紹介する相続土地国庫帰属制度になります。
今回の記事では、相続土地国庫帰属制度の概要や制度の内容について相続に詳しい司法書士の久我山左近がわかりやすく解説いたします。
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相続した土地を国に返す相続土地国庫帰属制度とは?司法書士が解説します!
2021年の民法と不動産登記法の改正により、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律「相続土地国庫帰属制度」が制定されました。
その目的は、現在の日本で大きな問題になっている所有者不明土地の解消を促すためになります。
相続土地国庫帰属制度の概要について
相続土地国庫帰属制度とは、相続によって土地の所有権を取得した相続人が法務大臣の承認により土地を手放して国庫に帰属させることができる制度になります。
この相続土地国庫帰属制と似ている制度には以前からある「相続放棄」がありますが、相続放棄すると初めから相続人ではないことになりますので、手放したい不要な土地だけでなく、すべての相続財産を放棄しなければなりません。
また、相続放棄をしても、その土地の管理義務は新たな所有者が管理を開始するまで負わなければならないというデメリットがありました。
しかし、相続土地国庫帰属制度を利用すると、不要な土地のみを国に引き取ってもらえますし、相続した土地を国に帰属させることによって、不要な土地の管理義務もなくなるというメリットがあります。
相続土地国庫帰属制度の対象となる土地には決まった条件があります。
相続土地国庫帰属制度の対象になるのは、どんな土地でもいい訳ではなく、利用するのに決まった条件があります。
ここからは、相続土地国庫帰属制度の対象となる土地についてわかりやすく解説いたします。
まず土地を入手した経緯が重要になります。
まず、相続土地国庫帰属制度という名称にもある通りで、相続土地国庫帰属制度の対象になる不動産は、相続または相続人に対する遺贈によって所有権を得た土地に限られます。
ですから、売買や一般的な贈与によって取得した土地は、相続土地国庫帰属制度の対象にはなりません。
申請ができない土地と承認が受けられない土地を詳しく解説します。
以下が相続土地国庫帰属制度の申請や承認ができない土地になります。
申請することができないケース
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 他人の使用が予定されている土地
- 境界や所有権について争いがある土地
承認が受けられないケース
- 勾配や高さの崖があり管理に過分な費用や労力がかかる土地
- 土地の管理や処分を阻害する有体物が地上または地下にある土地
- 隣接する土地の所有者との争訟によらなければ管理や処分ができない土地
- その他、通常の管理や処分に当たって過分な費用や労力がかかる土地
相続土地国庫帰属制度の利用方法を解説します。
ここからは、相続土地国庫帰属制度の利用方法と手続きに必要な費用について解説いたします。
手続きに必要な費用のうち承認申請の手数料があり現在ではまだ決まっていませんが、おそらく数万円程度になると予想されます。
承認申請の手続きの流れ
以下が相続土地国庫帰属制度の承認申請の手続きの流れになります。
- 相続により土地の所有権を取得した者が国庫帰属の承認申請を行います。ここでは、承認申請書の提出と審査手数料の納付が必要です。
- 受け付けがされると関係省庁や地方公共団体に情報が提供されます。
- 法務局担当官による書面審査が行われますが、内容によってはここで却下されることもあります。
- 法務局担当官による実地調査が行われますが、内容によってはここで不承認になることがあります。
- 問題がなければ、法務大臣により承認されます。
- 負担金を30日以内に納付します。
- いらない土地は、国庫に帰属されます。
相続土地国庫持続制度を利用する際に発生する負担金について
承認があった場合に承認申請者は10年分の土地管理費相当額の負担金を納付することで、その土地の所有権を国庫に帰属させることができます。
その負担金は政令案に基づく負担金算定の基準が発表されていて、宅地、田、畑、その他の土地は面積に関わらず20万円になります。
ただし、一部の市街地の宅地と、一部の市街地や農用地区域の田、畑については面積に応じて算定されますので、注意が必要になります。
また森林についても面積に応じて負担金が算定されます。
国に帰属させてもそれなりのコストは発生します。
当たり前ですが、土地を所有していると固定資産税の納付が必要になります。
相続した土地を使う予定がなければ、固定資産税を無駄に支払い続けることになり、土地の管理義務責任もありますので、不要な土地は処分したいと思うのが多くの相続人の気持ちだと思います。
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を抱える相続人にとって、救済的な制度になる可能性があります。
しかし、不要な土地を国に帰属させてもコストがかかることに変わりはありません。
相続人への負担が最低でも20万円かかり、土地の場所や面積によっては100万円以上のコストがかかる場合もあります。
さらに建物がある土地を国庫に帰属させる場合は、不必要な建物を解体する費用もかかります。
相続人にとって有利な制度になる可能性があることは確かですが、申請はそんなに簡単なものではありませんので、土地国庫帰属制度は、よく検討してから申請する必要がありそうです。
また、土地国庫帰属制度自体も今よりも利用しやすいように、少しずつ変わっていく必要があるかもしれませんね。
ここまでで、今回のブログ「相続土地国庫帰属制度の概要と注意点について司法書士が詳しく解説します!」のテーマの解説は以上になります。
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それでは、司法書士の久我山左近でした。